2019.2.18
家具の写真
かれこれ10年来の友人であるカメラマンの岡村昌宏さんに家具の写真を撮ってもらいました。岡村さんは職人気質という言葉がよく似合う、写真技術に精通したカメラマンです。歪みのない、被写界深度の浅い(ピントの合う範囲が狭い)、ボケ足が滑らかに連続する精緻な写真となりました。
photographs
Masahiro Okamura (CROSSOVER) took photographs of monokraft's furnitures. I will add those beautiful photos to the product page on the website soon.
写真について
今年5才になる娘は、いま必死にひらがなの文字を描いている。「よ」という文字のかたちを真似しては、白い紙に「よ」に似てはいるものの文字には見えない線を描いてる。曲がりくねった線は彼女の目にどのように写っているのだろうか。しかし、このサイ・トゥオンブリーの絵画のような線を繰り返し書くうちに、いずれその形は「よ」にしか見えなくなるのであろう。
写真はあるひとつの見え方(視点)の記録であると思う。その視点はある角度から見た、あるレンズを通した、被写体のひとつの側面を記録したものである。その被写体の全体像を定着させることはできない。女優やアイドルのブロマイドは何百枚も撮影された写真のうちの、最も美しく見えた一瞬の記録である。(さらにCGによる合成が加わる)実際に本人に会って見ると、その印象はきっと違うのだと思う。
一方で、写真は繰り返し見ることができる。娘が文字を覚える時のように、脳内にはそのイメージが強く定着していくことになり、そのうちにほんものを見ても、今度はそれを写真のイメージと合わせるように見るようになるのではないかと思う。そうなると、はじめてそれを見る時のような無垢な視線を取りもどすことは、もはやできないのだと思う。記号化された「よ」という形が抽象的な線には見えないように。
多くの名作家具は美しく見える角度から撮影されて、たくさんの写真が多くの人の目に触れられている。実物を手にとって見る時には、写真で見た形や雰囲気にあわせてその家具を見るので、やっぱり名作だということになる...。しかし、生活の中で使いはじめると、いろいろな角度から見ることになり、思っても見なかったような表情を発見したりする。手で触ったり、体で感じてはじめて、その家具が自分に合うのかどうかを知ることができるのだと思う。ほんとうの形はなかなか見えないのである。